シェエラザード | Barたまブログ   ФAlfaromeo+Volvo+BuellФ

シェエラザード

満員通勤小説批評シリーズ、毎日読んどります。ここんところもイロイロ読んでるんですが、ネタに出来ず時間経過で忘れてしまいました。因みに最近読んだ小説以下の通り。

●村上春樹 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

●池波正太郎 剣客商売 辻斬り

●トムクランシー 教皇暗殺

●糸井重里 オトナ語の謎


これ以外にもこんなの読んでます。

○青木謙知 ミリタリー選書 現代軍用機入門

ははは。ちょっちお仕事モードですわ。



んで、直近で読んでいるのは、ちょっと今更なところもありましたが、浅田次郎氏の小説「シェエラザード」です。以前に「蒼穹の昴」を読んだ友人が絶賛してたモンですから、浅田次郎氏の著書未体験だったモンで非常に興味ありました。ただ、「蒼穹の昴」は題材が清王朝の頃なので、ちょっと苦手なんですよねぇ中国系。引いた挙句、先にシェエラザードで浅田ワールドに慣れようかと思って・・・。

この作品、大東亜戦争も末期の昭和20年頃のお話です。日本占領地における連合国側の捕虜、抑留者への人道支援を目的に、攻撃も臨検もされない、という確約(安導券という)をアメリカから受けていた日本船籍の貨客船があったんですねぇ。それが日本郵船の弥勒丸(軍が徴用)です。当時、日本は東京にも空襲が頻繁になり、一大拠点のフィリピンが陥落した後です。既に日本領海でも、制空・制海権を失っていた状況で、敵潜水艦がウヨウヨ居る東シナ海に物資運搬の任を負わされた弥勒丸ですが、最後には盾とされた民間人を供に、謎を残して撃沈されてしまいます。その弥勒丸を戦後60年以上経った今、引き揚げようとするのですが・・・。

このシェエラザード、NHKでもドラマ化されたそうですが、実話が元の歴史小説です。本編に出てくる弥勒丸なる緑十字船は、日本郵船所属の新鋭貨客船「阿波丸」です。この阿波丸も小説と同じく、米潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されており、「阿波丸事件」として米国も撃沈の非を認めた惨劇でした。

http://yokohama.cool.ne.jp/esearch/sensi-zantei/sensi-awamaru1.html

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↑日本郵船の阿波丸。戦時中の昭和18年に竣工した貴重な貨客新鋭船。


史実でも阿波丸は安導券を持ちながら撃沈されています。作品と史実で異なるのは、

●帰路に破綻寸前の上海の儲備銀行へ運ぶ軍費の金塊を積んでいた
●婦女子含む民間人を盾として使った

この部分です。しかし、史実で阿波丸も帰路、何故か連合国側に通達していた指定航路から逸脱した航路を取っていた模様で、誤認から撃沈されたことになっています。その辺りは謎のまま。ここには浅田氏なりの解釈が入っています。


読んだ感想ですが、序盤は少し入り難い感じを受けました。ここんところ、柔らか系ナヨナヨ文章読んでいたせいか、硬いんですなぁ。な、モノでボーっと読んでると入り難いところがありました。途中から、身構えて読むようになってからは、結構没頭できました。特に後半の物語が終焉に向かって動き出す辺りは、展開も速く、非常に面白かったです。特に昭南市で特務機関の小笠原大佐が、

君は平和な時代を知らんね

と若い士官候補生に言った言葉が印象的でしたねぇ。

ここのところ、同じ小説家の作品を続けて読んでたので余計かも知れませんが、浅田次郎氏の登場人物はとても躍動してますね。生きてる感じがします。人物背景やキャラ付けが明確なのだと思いますが、これは他の作家にない感じ。好きですね。更に、途中で阿波丸のことを知ったモノですから、余計にのめり込みました。


ま、兎に角、読んでみる価値あり!なナイス作品でした。